FIX技術を活用した迅速な合併によるITの統合を実現− 日本ユニコム株式会社(東京)に於けるケーススタデイー
日本の金融業界は、1997年の「ビッグ・バン」による規制緩和で国内証券各社が業務の再整理と組織の再構築を余儀なくされて以来、急速に変化している。伸びない収益、経費の大幅削減、企業の統合合併・買収が珍しいことではなくなってきたのである。
三和銀行、さくら銀行、富士銀行等日本の一般家庭でよく知られていた企業名は合併のために消えてしまい、UFJグループ、SMBCグループ、みずほフィナンシャルグループという巨大な新金融組織がつくられた。ここで興味深いのは、かつて使われていた日本の伝統的な桜の花を表す「さくら」や、日本の最高峰であり、聖なる山である「富士」というような企業名は廃止され、もっと現代的な名称に変えられたことである。これは日本が、従来の慣習的なビジネスのやり方とは袂を分かつというはっきりしたメッセージをグローバルな金融世界に発したものである。日本の金融業界を取り巻く風景は激変し、世界の金融機関の中で最も大きな企業のいくつかを生み出した。この影響はしばらく続くであろうし、このような展開は現在も進行中である。
日本の規制緩和を進める結果新しく作られた巨大銀行は、グローバルな組織に参入すべく合併統合の動きを始めている。業務をより円滑に行うため、また顧客へのサービスを多角化して優位に立つため、子会社を整理合併した持ち株企業もある。
近年までFIXは国内の機関投資家に 受け入れられなかった為日本では普及しなかった。
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日本以外の大手の証券会社内でこのような機構改編が行われる場合、通常そのリストラの過程でFIXプロトコルの活用が検討されるであろう。しかしながらFIXの導入に関し、日本はヨーロッパやアメリカの同業者にかなりの遅れをとっているというのが一般的な見解である。ごく最近までFIXプロトコルは日本国内ではしっかりした足場を持っていなかった。これはFIXが日本国内のバイサイドにきちんと認識されていなかったためであるが、その主たる理由としては法規制の問題、過去数年の不況の為各企業のIT予算が削減されたこと、そして以前からの取引の慣習が挙げられる。当初日本ではFIXプロトコルは株式商品用に取り入れられ、他の商品への活用はいまだに検討されていない。とは言ったものの株式商品以外の活用に関し、日本の主要な商品先物取引企業で原油、貴金属、ゴムなど日本市場に上場されている全ての商品を扱っている日本ユニコム株式会社はFIXの戦略的価値を認知した。
商品の取引は日本の金融業界内ではあまり目立った存在ではないが、デリバテイブ商品を取引する際にFIXを導入することに関し、日本の金融業界をリードすることになったのが日本ユニコム株式会社である。FIXバージョン4.3を日本で初めて採用した証券会社が日本ユニコムである。
日本ユニコム株式会社とは
日本ユニコム株式会社は1958年の創業後、日本の商品先物市場の主要な企業となった。この市場は輸入原材料の取引が主たる活動である。日本ユニコム社は日本の商品先物市場の東京工業品取引所(TOCOM)と東京穀物商品取引所(TGE)で扱われる全ての商品の取引とクリアランス業務を行う。貴金属、原油、ゴム、大豆等の先物取引が含まれる。日本ユニコムが扱うのは主として商品先物であるが、外国為替証拠金取引等の分野にも乗り出している。
市場の競争が激しくなっていく状況に対応し、日本ユニコムは子会社であるアクセス証券とセンチュリー証券を統合し、市場で優位に立とうとしている。合併は2004年7月20日に成立し、センチュリー証券という名の下に先物・オプション、株式と株式信用取引を含む幅広い商品の取引サービスを提供する。
トレーディング・システムの任務
企業の統合合併や買収後の最大の難問は、各社で使われていたトレーディング・システムを統合することである。
アクセス証券とセンチュリー証券は、それぞれトレードワークス社と他のソフトウエア・ベンダーによるサービスを利用し、全く異なるシステムを使用して業務を行っていた。さらに両社ともリテール顧客の為のインターネット・トレーディング・システムを各社のOMSに接続していた。
アクセス証券とセンチュリー証券は、それぞれ全く異なるシステム (トレードワークス社と他のソフトウエア・ベンダーが提供)を利用し、 業務を行っていた。
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持ち株会社である日本ユニコムはプロジェクト・チームを設け、3ヶ月以内にこの両社の個別の基盤システムを統合するよう指示した。しかもこの間、合併に伴う諸活動に関わらず、日々の顧客・機関投資家への業務は中断されることなく、しかも質の高いサービスを提供する必要があった。合併後はセンチュリー証券の顧客基盤が取引する「日経225」は全てトレードワークス社のOMSであるTrade
Agentを通じてOSEにつなぐという計画であった。
この方法で合併前の両社の顧客からの注文の流れを統合できると同時に、センチュリー証券が利用していたブローカー手数料に関わる執行費用の削減にもなると思われた。
日本の金融業界の厳しい競争状況の中、日本ユニコムが子会社2社の合併を短期間で成立させることは非常に重要なことであった。
FIXの技術を活用した、合併後のIT統合ソリューション
社内のプロジェクト・チームと日本ユニコムの利用するソフトウエア・ベンダーであるトレードワークス社は合併という状況に対応すべく、二つの個別の取引プラットフォームを3ヶ月という短期間で統合させるという挑戦に立ち向かわなければならなかった。
緊迫する中、両社で使用されているプラットフォーム技術とテクノロジーを分析し、さまざまなシナリオが考えられた。しかしながら、従来から行われているような形のシステム統合、システムの入れ替え、あるいはインターフェースさせるというような方法では時間が間に合わないことがわかった。
その結果プロジェクト・チームは最終的にFIXが社内のIT統合の難問を解決してくれ、合併に伴って2社のシステムを統合させるという目的にかなった最善の技術であるという結論に達した。FIX技術がこの両社の合併プロジェクトに伴う迅速なIT統合の答えであった。
ここで興味深いことは、通常金融業界の参加者と取引所による証券の売買に関するメッセージのやり取りに活用されているFIXが、日本ユニコムの場合には合併しようとする2社相互の取引プラットフォーム間の流れを高速に行うために活用されたという点である。
トレードワークス社は日本ユニコム社の指示で、以下の必要事項を満たすFIXエンジンをさがすことになった。
- 決められた時間内に設置できること
- 持続性と復元力があること
- デリバテイブ商品のサポートができること
- パフォーマンスが良いこと
- FIXバージョン4.3に対応できること(デリバテイブ商品の強化に伴う)
- 高速展開が可能なこと
- 日本国内にコンサンルタント、ならびにサポート・サービスがあること
トレードワークス社は日本ユニコムのために3社のFIXエンジンを検討した結果、キャメロン社のキャメロンFIXエンジンを採用し、メタビット社のサポート・サービスを受ける許可を得た。
日本ユニコムはメタビットがFIXに関する専門知識を有し、経験豊かであると同時に日本の金融業界に精通していることから同社を選択し、トレードワークス社を援助してキャメロンFIXエンジンを迅速に取り入れ、FIX接続のためのデザインとアーキテクチャを作るよう依頼した。
日本ユニコムがキャメロンFIXを選ぶにいたった鍵は、そのデリバテイブ商品取引の経験、さまざまなFIXバージョンをサポートできること、プラットフォーム不特定であること(日本ユニコムはWindows
2003使用希望)、経費、頑丈なアーキテクチャ、そして増えつづける日本の顧客を含め世界400箇所もの顧客サイトでの導入実績である。
トレードワークス社は、Trade Agentと接続するためMSMQとインターフェースできる適切なアダプターがすでに存在することを知り、このMSMQアダプターのお陰で今回の統合プロジェクトの時間を節約できたとしている。
今日、日本でデリバテイブ取引にFIXを利用するのは一般的ではない
日本の証券会社は、西欧の金融市場を除いては、上場されたデリバテイブ商品をFIXを通して取引することに不安を感じている。この原因の一つは、FIXが先物・オプションを扱えるかどうか疑問をもっているからである。さらに、日本でFIXを利用している機関の多くはFIX4.1ないし4.1Jを使用しており、デリバテイブ取引のサポート機能が増加されたFIX4.3を使用していないということにも起因する。メタビット社がよく直面するのは日本の顧客が、FIXエンジンはバージョンが異なるとコミュニケーションに問題が起きるという誤解である。
日本の証券会社は、西欧の金融市場を除いては、 上場されたデリバテイブ商品の FIXを通した取引に不安を感じている。
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今日、デリバテイブ取引をサポートする能力の高い特徴を持ったFIX4.3は日本の金融各社から避けられているのが実態である。これはほとんど広範に使用されているFIX4.1と適合しないのではという危惧からくるものである。
FIX4.3の導入に踏み切ったことで、日本ユニコム社はFIXを通じた先物・オプションの取引で市場の先駆者となったわけである。日本ユニコムの今回の決定には、キャメロンFIXのユニバーサル・サーバーが使用するFIXバージョンを問わず上場されたデリバテイブ商品をサポートしているという実績が強い後押しとなったのである。
実装方法概念図 − 合併前/合併後の構成
上の図は2社の合併前と後のシステム統合の様子を示す構成図である。合併後の図は2社のそれぞれ異なるOMSのFIXを活用した迅速な統合を示し、新しいセンチュリー証券として円滑な業務提供を継続する様子をあらわしたものである。
技術解決法は以下の通りである。
日本ユニコム社がモニタリング、スケジューリングとメッセージ・バリデータのオプションを含めたキャメロンFIX
V6.1を選択する。
- トレードワークス社がMicrosoft Message MQ(MSMQ)の技術アダプターを使用しキャメロンFIXとTrade Agent OMSを接続することを決断。
- キャメロンFIXと第三社のOMS間はFIX4.3セッションを利用。
- OS:Windows 2003をスタンダードなWindowsサーバー上で使用。
今回の2社の合併に際し、FIXを活用して迅速なIT統合を図るという計画は成功を収めた。合併前の各証券会社の異なる環境にも関わらずプロジェクト・チームがキャメロンFIXと第三社OMS間のFIX4.3セッションの接続に要した時間は4時間のみである。オーダーの受注と約定通知は翌日円滑に行われた。
FIXエンジンと片方のトレーディング・システムの統合が迅速に進んだお陰で、プロジェクト・チームはキャメロンFIXとMSMQを通してTrade
Agentへの、より複雑な接続に集中することができた。このような状況から、3ヶ月という短い制限期間内でFIXエンジンの評価から始まり、導入、テスト、稼動まで完了することが出来た。
日本ユニコム社のFIX導入は、合併プロジェクトに際しての迅速なIT統合手段としてのFIX活用を国内の金融業界に示すものである。従来、IT統合は非常に複雑で時間を要するものであり、今回のような導入例は金融業界にFIXの更なるグローバルな戦略の重要性を示すものである。
日本ユニコム社のFIX導入は、従来複雑で多大な時間を要する 合併プロジェクトに際して、迅速なIT統合手段としての活用を 金融業界に示すもので、グローバルな戦略的価値を更に伸ばした。
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日本ユニコム社は今回のIT統合を短時間とわずかな経費で達成できた。その上統合期間中、各子会社の日々の業務や顧客へのサービスにも支障がみられなかった。日本ユニコム社は、子会社の迅速なIT統合戦略という形のFIX採用決定のお陰で、合併後の新しい組織のIT戦略において不可欠とも言うべき新しい技術を獲得したのである。
FIXプロトコルは、日本ユニコム社の他の事業分野での取引もサポートするのである(例えば為替取引)。このことはデリバテイブ商品用にFIX4.3活用の先頭を切った日本ユニコム社の決定を後押ししたと言える。
日本で、FIXプロトコルの戦略的価値とFIXエンジンが認められ、証券、先物・オプション、債権、商品、と為替取引といった証券会社の全ての商品を扱う唯一のコミュニケーション手段になるのはまだしばらく時間がかかりそうである。
近い将来、日本の他の金融機関もFIXが証券のみに限られたものではないことに気が付くことであろう。そういった企業が日本ユニコム社の例にならい、日本の金融業界全体で使用されるコミュニケーション・プロトコルを統一するパイオニアになるであろう。
FIX Global Vol 1 Issue 3 2004年9月